8月29日に、アジレントテクノロジ社キーサイトテクノロジ様が主催する「50万円台からの高周波シミュレータGENESYS体験セミナ」に参加してきました。
一方、「GENESYS」は50万円台からということで、なんとか手が出るかもしれない、と思い、体験セミナーに参加してきました。
それに先立ち、GENESYSの体験版を入手し、30日間すべての機能が使えるライセンスキーを発行してもらいました。
結果的にはGENESYSでは、私がやりたいこと(マイクロストリップラインで接続された高速シリアル信号のアイパターン観測)ができないことがわかり、それを行うためにはADSが必要で、年間保守料込みで375万円かかるとのこと。これでは手が出ません。
まず、下の図をご覧ください。
これは何を意味しているかと言うと、テストクーポンの長さ130mmに対してマイクロストリップラインの入り口(Start)から出口(End)までの時間を測定し、実効誘電率を測定しています。画面右のDielectric cがその値です。ここでは「2.16」という値が測定されました。
この実効誘電率をGENESYSの機能「TLINE」を使って計算してみました。条件は、前回と同じで以下の通り。
- プリプレグの誘電率は3.6
- マイクロストリップラインの幅は、0.5mm
- プリプレグの厚みは0.24mm
- 銅箔の厚みは35μm(0.035mm)
この条件で計算すると、確かにマイクロストリップラインのインピーダンスは約50オームになるのですが、実効誘電率が大きく違い、GENESYSの計算では、「2.73」とでました。実測値は「2.16」です。
おそらく実測値は間違いないでしょうから、あとはGENESYSに入力するパラメータがおかしいということになります。で、やっぱり気になるのは誘電率です。
誘電率のみを変えても実効誘電率が2.16に近づかなかったため、今度はプリプレグの厚みを、0.25mmから0.2mmにしてみました。すると、実効誘電率が2.16と、実験値に非常に近い値が得られました。
さらにGENESYSのタイムドメイン機能を用いて、最初の図と同じTDR画面を再現してみました。この再現では、コネクタのモデルがありませんので、TDR波形の暴れは再現されません。しかしながら、マイクロストリップラインの上を伝搬する波のスピードは測定することができます。
マイクロストリップラインの条件は、先ほど計算したときと同じで、
- プリプレグの誘電率は2.7
- マイクロストリップラインの幅は、0.5mm
- プリプレグの厚みは0.2mm
- 銅箔の厚みは35μm(0.035mm)
です。
当然特性インピーダンスは50オームに近くなります。さらにマイクロストリップラインの入り口から出口までの時間は約1.3nsと、TDR波形で実測した時間とほぼ同じでした。
これから導かれる結論は、「プリプレグの誘電率は2.7であった」ということです。ちょっと信じられない値ですが、実測と理論値がこうもぴったり合うと信じないわけにはゆきません。時間があれば、この基板のプリプレグのみを抜き出し誘電率を計ってみたいと思います。