投稿者「Nobuyuki Kunito」のアーカイブ

日本語で解説された唯一のパワーインテグリティ解説書発売

 最新情報のページでもご紹介しましたが、デバッグ・ラボ代表、國頭延行が翻訳に携わった、
パワーインテグリティのすべて」が、2010年1月20日に翔泳社様より刊行されます。
Power_Integrity_Cover.jpg この本は、2007年にアメリカで発行された、Power Integrity Modeling and Design for Semiconductors and Systemsの翻訳版です。
 
 「パワーインテグリティのすべて」は、恐らく日本で初めて刊行される、「パワーインテグリティ」に関する詳細な解説書です。以下、「パワーインテグリティのすべて」の内容をかいつまんで説明いたします。ご購入に対する参考になれば幸いです。
 
 5章で構成されており、第1章はパワーインテグリティの基本概念が丁寧に解説されています。この章を読めば、「パワーインテグリティ」、「電源分配ネットワーク(PDN)、「ターゲットインピーダンス」、「プレーン」といった、パワーインテグリティを理解するための重要なテクニカルタームの理解が出来ると思います。
 第2章は、PDNの中でも最も重要な概念である「プレーン」の説明と、「プレーン」をどのようにモデリングしてシミュレーションすべきかが議論されています。
 第3章は、同時スイッチングノイズ(SSN)が、PDNに与える影響について言及され、SSNが発生するメカニズムと、その抑制方法が解説されています。
 第4章は、PDNをタイムドメイン上で解析する為の手法を、数学的アプローチで解説しています。
 最後の第5章は、第1章から第4章までの内容をふまえ、パワーインテグリティのテクニックを駆使した応用例が紹介されています。具体的に言うと、
 
  • サンマイクロシステムの高速サーバ
  • ラムバス社の高速シリアルリンクI/Oの性能を生かすPCB設計
  • IBM社のHyperBGAパッケージの解析と実測
  • 高周波における誘電体の誘電率測定法
  • デュポン社が開発した基板埋め込み型のデカップリングキャパシタ
  • パナソニックが開発したRF/ディジタル回路混載を可能にする、EBG(Electricband Gap)構造
です。
 多少難しい内容も含まれますが、一通り読まれることをお勧めします。
 
 もしお時間がない、と言う場合は、まず第1章を読み、続いて応用例が数多く紹介されている第5章を読まれると良いでしょう。第5章を読みながら分からない内容が合ったら、その項目が書かれている章または参考文献をあたられると良いでしょう。
 
次ページに、日本語版への序文、監訳者序文及び國頭延行によるあとがきの一部抜粋と、全文PDFを掲載しました。この文書も参考になるかと思います。
 
2月1日
追記
お陰様で、Amazon.co.jpにて、好調な売れ行きをしてしております。
 
2月1日、朝6時40分現在、全カテゴリー >  > 科学・テクノロジー > 工学 > 電気工学にて、14位です。
Rank_14_on_Feb-1.jpg

理工書ですので、第一刷はそれほど沢山印刷しておりません。お早めの購入をお勧めいたします。

2010年年頭のご挨拶とお知らせ

 皆様、明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願いいたします。

2008年9月に起きた「リーマンショック」により、世界同時不況の波に洗われ、日本の電子機器製造業は、苦しい状況を強いられております。
 
 デバッグ・ラボもその余波を受け、受注が極端に減り、2009年度は苦しい一年でありました。
 しかしながら、2009年末より少しずつではありますが、受注物件があり、昨年度よりも多少ながらも「良き年」を迎えられるかもしれない、と思っております。
 
 皆様のお仕事にも少しでも貢献できれば、と思っておりますので、これまでと同様、デバッグ・ラボを宜しくお願いいたします。
 
デバッグ・ラボ 代表
國頭 延行
 
 最後にお知らせです。
 昨年1年をかけて翻訳した、「パワーインテグリティのすべて」が翔泳社様から出版されます。 
 Power_Integrity_Cover.jpg
 これは、Prentice Hall社から2007年に刊行された、

Power Integrity Modeling and Design for Semiconductors and Systems

を翻訳した物で、日本で初めての日本語による「パワーインテグリティ」の解説書です。
 
 「パワーインテグリティ」は新しい概念で、シグナルインテグリティ改善に役立つだけでなく、年々クロック周波数が上昇し続けている電子回路を搭載したプリント基板からの不要輻射を、劇的に改善可能なテクニックです。
 
 またここ数年、RF回路と高速ディジタル回路を同一のプリント基板上に混在させることを目的とした、「EBG(Electromagnetic Bandgap)構造」(残念ながらリンク切れ:2015年9月14日確認)に関する詳細な解説記事もあります。
 
 上記の本に関する簡単な解説をこちらに掲載いたしましたので、ご覧下さい。
 

【新連載】英日翻訳に関する苦労話始めました

 6月9日に「ハワード・ジョンション博士Dr. Howard Johnsonアプリケーションノートの翻訳が好評、との新着情報を書きましたが、折角なので、今までやってきた翻訳の例を引いて、翻訳時の苦労話を連載で書きたいと思います。

 最初のエントリーは、プロとして翻訳者デビューした作品 アナログ・テクノロジシリーズ OPアンプ大全(CQ出版社刊)で遭遇した「何これ?」な話を書きました。こちらのリンクからどうぞ。
 
 数回の連載になると思います。どうぞお楽しみに。

【新連載】英日翻訳に関する苦労話 Part.1 「鳩の穴」

2015年9月22日追記:

記事の後半部分が失われてしまっています。恐らく2014年末にホスティング会社を変えた時に何か起こったようです。復帰次第、最新情報でお知らせしますので、暫くお待ち頂ければ幸いです。

 

 現在、レクロイ・ジャパン様(現:テレダイン・レクロイ・ジャパン様)向けに、シグナル・インテグリティ分野のパイオニアである、ハワード・ジョンション博士Dr. Howard Johnson)が書かれているアプリケーションノート「Fundamentasl of Signal Integrity」を翻訳させていただいています。


 「最新情報」にも少し書きましたが、「Fundamentals of Signal Integrity」の翻訳版である、「シグナル・インテグリティ基本」が発行された、というE-mail配信があると、レクロイ・ジャパン様のWEBサーバーへのアクセスが、最大で通常の5倍まで増えたとか・・・

  ありがたいお話しです。
 
 そう言うこともあって、今回は今まで行った翻訳にまつわるTips等を紹介しましょう。
 
●「鳩の穴」って何?

 最初にお金を頂いて翻訳をしたのは、CQ出版社から発行されてる「アナログ・テクノロジシリーズ OPアンプ大全」でした。原本はアナログデバイセズ社が発行している「OP Amp Applications」と呼ばれる1000ページ以上はある本です。当然ながら私一人では出来ませんから、CQ出版社の著者の会である「電子回路技術研究会」のメンバーの内約10名程で翻訳を始めました。

 

 翻訳を始めてみると、電子回路やOPアンプの知識だけではなく、英語圏で使われている「ことわざ」とか「日本にはないけれど、欧米では当たり前の言葉」を知っていないと翻訳が出来ない事態に陥ります。
 「OP Amp Applications」の翻訳を始めて、最初に出会った言葉で苦労したのは、「pigeonhole」という言葉です。直訳すると、「鳩の穴」ですよ。でも前後の文脈を考えてもそう言う訳は考えられないのです。
 手元にある英和辞典を引いてみても、まったく分からず、なぜこんな言葉が出てきたのかが、全く理解出来ませんでした。
 再度原文を見てみると、こんな文章でした。
 
OP Amp Applicationsから引用ここから)
So, it should be obvious that categories of op amps are like an infinite set of analog gray scales; they don’t always fit neatly into pigeonhole, and we shouldn’t expect them to.
(ここまで)
 
 この文章の前の文脈には、「最近のOPアンプは沢山の種類があり、昔なら成り立たなかった『CMOS OPアンプだけれど、高速動作が可能なOPアンプ』とか、『GB積が100MHz程度でかつ、高精度のOPアンプ』といったものがある」という文章があり、そのことから、上記の英文を訳すと、
 
「ですから、OPアンプのカテゴリは、無限の連続したグレースケールカラーのように、簡単に分類できないのです。ということは、OPアンプは、 pigeonholeの中にちゃんと入るわけではなく、設計者は「pigeonholeにちゃんとに入る」とは期待しないことです」
という「ラフな訳」が完成したわけです。
(以下、文章が切れています。復帰次第「最新情報」でお知らせします)

ハワード・ジョンソン博士のアプリノートの翻訳、好評です。

 現在、アメリカのデジタルオシロスコープメーカー、レクロイ社が(現:テレダイン・レクロイ社)2008年6月から発行している、「Fundamental of Signal Integrity」の翻訳を続けさせていただいております。

Fundamental_of_SI_Cover.jpg

 この「Fundamental of Signal Integrity」の著者は、シグナル・インテグリティの分野では、非常に有名な、「ハワード・ジョンソン博士」(Dr. Howard Johson)です。
 
 私の記憶が間違っていなければ、日本で最初に紹介された「シグナル・インテグリティ」に関する本、「High-Speed Digital Design : A Handbook of Black Magic」の著者でもあり、「シグナル・インテグリティ」という言葉とその概念を日本に最初に伝えた人であろう、と思います。
 
 2009年6月9日現在、No.1からNo.6まで翻訳されて、テレダイン・レクロイ・ジャパン様のWEBサイトの以下のページからダウンロードできます。
  最近、レクロイ・ジャパンの担当者とお会いする機会がありまして、この日本語版発行のお知らせをメール配信で流すと、レクロイ・ジャパンのWEBサイトへのアクセスが急増し、さらに、「毎回楽しみにしています」というお礼のメールまで送られてくるそうです。
 
 翻訳者冥利に尽きますね。なお、この翻訳を行うにあたり、私の名前を日本語版に必ず入れること、というのが、ハワード・ジョンション博士からの条件だったらしく、私の名前とデバッグ・ラボのURLを入れていただいております。
Fundamental_of_SI_Translator.jpg 
 ありがたい話です。
 
 今週末に、この翻訳で苦労した点などを紹介する記事を書きたいと思います。翻訳の仕事は何度かやりましたが、ハワード・ジョンション博士は、「ことわざ」を使うのが好きなようで、「英英辞典」のお世話になりました。
 
 内容については、お楽しみに・・・
 
 以下に、ハワード・ジョンション博士が書かれた著作と、その翻訳版を紹介しておきます。





トランジスタ技術に記事を書きました

 トランジスタ技術 2009年2月号3月号に、「位相雑音とジッタの関係を探る」と題して記事を書きました。

 Toragi_Feb_Cover.jpg
 これは、レクロイ・ジャパン株式会社在籍中に考えていた内容をまとめて記事にしたものです。
 
 位相雑音は信号発生器の安定度を測る指標で、その単位は「dBc/Hz」です。専用の測定器、例えば、キーサイト・テクノロジー様信号源アナライザを使って測定することができます。
 
 一方、ジッタは、やはり信号の安定度を測る指標で、ジッタ解析機能の付いたデジタル・オシロスコープ、例えば、レクロイ社の、Waverunnerシリーズなどで測定でき(デバッグ・ラボは、Waverunner6200を所有)、その単位は「second(秒)」です。
 
 それぞれ、「信号の安定度」を測る指標であることに間違いはないのですが、位相雑音は「周波数ドメイン」、ジッタは「タイムドメイン」の単位です。この2つの測定値を結びつけることを証明する文献は非常に少なく、体系的に説明した文献は私が知る限りありませんでした。
 
 今回の記事では、この2つの測定値を理論的に結びつけ、ジッタ(正確には、タイムインターバルエラー:TIE)を位相雑音に変換することに成功しました。
 
 詳しくは、トランジスタ技術2009年2月号3月号の記事をご覧下さい。
 


2月号の記事の一部を以下に示します。
Toragi_Feb_Article.jpg
3月号の記事の一部をPDFファイルで読むことができます。ここをクリックして下さい。

明けましておめでとうございます

皆様、明けましておめでとうございます。本年もデバッグ・ラボを宜しくお願いいたします。

 
昨年は比較的多くの設備投資を行いまして、事務所にて3Gbps程度までのシグナル・インテグリティの動作確認・デバッグが可能になりました(写真参照)。
Equipments.jpg

 

昨年にもましてデバッグ・ラボをご愛顧いただきますようお願いいたします。
デバッグ・ラボ 代表 國頭(くにとう) 延行

アジレントテクノロジーGenesysを使った解析例の連載終了

11月から続けていた、ビアのあるマイクロストリップラインの特性解析が、本日終了いたしました。

 
ここでは、ビアを介してL1からL4にマイクロストリップラインの経路が変わる場合、どのようにしたら、ロス(S21)と、反射(S11)が少なくなるか、を主題に検討を重ね、一定の結論がでましたので、ここに報告したいと思います。
 
以下のページをごらん頂ければと思います。
 
 
Part6で、現在最も良いSパラメータが得られる例を示しました。今後は、この寸法で実際のマイクロストリップラインを作成し、ネットワークアナライザを使った解析を行いたいと思います。
 
最後に、Genesysを使わせていただいた、アジレントテクノロジー様(現:キーサイトテクノロジー様)に感謝の意を述べさせていただきます。
 
ありがとうございました。

ビアのあるマイクロストリップラインの特性解析 Part 6(まとめ)

Part 1からPart 5までで検討した内容をこのパートでまとめておきます。

1.ビアを介して層を渡るマイクロストリップラインのSパラメータを良くするためには、層を渡っているビアの近所にグランドビアを打つ。
2.グランドビアも、層を渡っているビアの近傍に2個対称に打つだけでは、Sパラメータ(特にS11とS21)の大きな改善が見られない(Part 3)
3.現在の所、マイクロストリップラインが層を渡るビアの近辺に対称に6個のビアを打った場合が最良の結果を得られる。
でした。
 今回シミュレーションしたマイクロストリップラインの構造をまとめておきます。
プリント基板の層構成
第1層:銅箔(t=40um)
誘電体:FR-4(Er=4.5、t=220um、tanδ= .0004)
第2層:銅箔(t=35um)
誘電体:FR-4(Er=4.5、t=930um、tanδ= .0004)
第3層:銅箔(t=35um)
誘電体:FR-4(Er=4.5、t=220um、tanδ= .0004)
第4層:銅箔(t=40um)
 
マイクロストリップラインの幅と長さ
幅 W=0.4mm
全長 L=40mm
 
ビアの直径とスルーホールの直径
ビアの直径 R=0.3mm
スルーホールの直径 r=0.2mm
 
グランドビアの配置寸法(図1の通り)
 
best_result_layout.jpg

 

図1 最良の結果を得ることができたグランドビアレイアウト(クリックで拡大)
 
 くどいですが、このレイアウトで得られたSパラメータ(S11とS21)を図2の示します。
 
6holes_via_through_L1_2_L4_Spara.jpg

 

図2 図1のレイアウトで得られたベストのSパラメーター(クリックして拡大)
 ここまでデータがそろったので、次回は実際にこ
の寸法でマイクロストリップラインを作ってみて、S11、S21の実測データがあうかどうか、検証してみたいと思います。
 最後になりましたが、Genesysを使わせていただき、さらに操作上の質問に対しても丁寧に対応していただいた、アジレントテクノロジー様(現:キーサイトテクノロジー様)に深く感謝いたします。
Part5に戻るには、ここをクリックしてください。

ビアのあるマイクロストリップラインの特性解析 Part 5

 Part4で紹介した、グランドビアはL2とL3を接続するだけにしていたのです。これは計算スピードを上げる為なのですが、このような構成を実際のプリント基板で作ろうとすると、とんでもないコストがかかります。

 
 そこで、ビアは、L1 – L2 – L3 – L4とまさに「貫通ビア」にする必要があります。その為には、ビアのパーツをグランドビアの所にあと2つ追加することにします。
 
 ビアのプロパティとして、どこの層からどこの層まで貫通させるか、というものがあるのですが、最初に追加したビアは、L1からL2まで(図ではM1からM2となっているが、MはMetalの略で、金属層のこと)の物1個(図1)とL3からL4までのもの1個(図2)です。L2からL3にわたるビアはそのまま使いました。なお、図1と図2では、それぞれのビアをずらして見やすくしてあります。
6holes_via_property.jpg
図1 L1からL2にわたる貫通ビアのプロパティ
6holes_via_property2.jpg
図2 L3からL4にわたる貫通ビアのプロパティ
 では、Part4の最後でベストの結果(共振点が無い)を出したグランドビアの配置(Part4の図5)はそのままで、L1からL4までの貫通ビアを、図2図3の要領で取り付けてシミュレーションした例を図4に示します。
6holes_via_through_L1_2_L4_Spara.jpg
図4 Part4の図5と同様のグランドビアの配列で、グランドビアをL1からL4まで全てに配置した場合
 
 残念ながら、2.7GHzと3.5GHz近辺に共振点が出てしまいました。これは、マイクロストリップラインの近傍に金属があるためでしょう。
 
 マイクロストリップラインがL1からL4へと遷移する近辺には、6つのビアがあり、そのビアの金属(特にグランドに接続されているビア)とマイクロストリップラインの相互の影響により、共振点が生まれた物を推察されます。
 
幸いなのは、それほど大きな共振点ではなく、おそらくこの程度ならシグナルインテグリティに影響はでないであろう、と言うことです。
 
 図4の特性よりももっと良い物が得られないかどうか、いろいろやってみましたが、Part4の図5ほどのものは得られず断念しました。 
 Part4に戻るには、ここをクリックしてください。          まとめはPart6で。